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更新日: 2021/08/28

梅雨

梅雨の写真

梅雨明けの雷、というものを聞かなくなって、というよりは「ああ、梅雨が明けた」とはっきり意識して夏の始まりを感じることがなくなって、どのくらい経つだろうか。どうもこの稿はむかし話が多い、どうも年寄り臭くていけないと、お叱りになるなかれ。現在進行している様々なことをつらつら考えていると、どうしても過去との比較対象、ということになってしまう場合が多々あるのでそれは致し方ないこととお考えいただきたいと思う。そこで、梅雨明けの雷なのだが、元々、一般的にこの時期の気圧配置を考えれば梅雨の末期には雷を発生させる積乱雲が出来やすい状況にあるので、特段「梅雨明け」に紐つけして拘る必要もないのだが、長く続く鬱陶しい湿度の高い雨降りのあと、稲妻一閃、盛大な雷鳴が起こり、これまた盛大な雨の後でカラリとした夏空が拡がる、というドラマティックな経過が「梅雨明けの雷」を懐かしく思い出してしまうことになる。

どういうものか、子どもの頃から雷とか稲光とかが好きだった。一天俄かにかき曇り、あっという間に周囲が暗くなって、という夏の夕立を懐かしく思い出す。思えば、夕立は短時間で上がり、あとは何事もなく涼風のたつ夏の夕方が訪れていたように思う。子どもだったので知ることも無かったのかどうかは分からないが、数年前から起こり始めた「ゲリラ豪雨」のような〝夕立での被害〟は多分、少なかったのではないだろうか。夕立はいつも、暑さを和らげてくれる嬉しい雨、だったように思うのである。

思えば今年は冬の頃から季節が妙な具合になっていて、2月に雪の五色沼を求めて福島県へ向かった時には、遥か向こうの山々には春の霞がかかっていて目指す五色沼に雪はほとんど消えていた。春の花も初夏の花も、季節を待たずにいつの間にか、数週間も早く咲き始めていたり、梅雨時の雨の切れ間に覗く空には、夏を思わせる積乱雲が立ち上っている。地球温暖化の影響なのか日本全体が温まってしまい、自然の方はその変化に一生懸命、順応しようとしているかのようだ。人間ばかりがウロウロと順応しきれないでいる。

今年の梅雨は例年になく、長かった。ちょうどこの稿を書いている8月1日、関東・甲信越の梅雨が明けました、との発表があった。気象庁の各種データ・資料を見てみると、「気象庁では、気象予測をもとに行う梅雨の入り明けの速報とは別に、梅雨の季節が過ぎてから、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討を行っています。」とあって、梅雨入り・梅雨明けの確定値(入りが何月何日ごろ、明けが何月何日ごろ、という日付)は、9月頃にならないと判定出来ないそうなので昨年までの情報しか分からないが、8月に入っての梅雨明けというのはどのくらいあったのかが気になって調べてみた。

観測が始まった1951年(昭和26年)は、入りが6月15日ごろ・明けが7月18日ごろ、となっており、その後は入り・明けともに数日から10日くらいの前後はあっても、実質の梅雨期間は約30日から40日ほどで、まあまあ我々の常識にある〝梅雨〟である。1963年になって突然のように梅雨入りが5月6日ごろ・明けが7月24日ごろ、という記載がある。5月6日といえばゴールデンウィークの頃だ。それから7月24日辺りまで延々、実に2ヶ月半も梅雨の期間だったということになる。1963年といえば東京オリンピックの前年だ。東京中は工事また工事の頃だったはずである。小学生だった私はそれほど長かった梅雨ということについての記憶は無いが、社会的には工事の遅れを来さないよう、さぞや大変だったことであろう。

それ以降も入りが6月中旬、明けは7月初旬だったり中旬だったりの年が続き、1982年になって初めて8月に入っての明けとなる。この年の入りは6月17日ごろ・明けは8月4日ごろ。この年、国内の出来事としては日航機羽田沖墜落事故(2月)・ホテルニュージャパン火災(2月)・500円硬貨の発行(4月)・テレホンカード発売開始(12月)があるが、気象関連のこととして7月に長崎大水害が発生している。先のデータは関東・甲信越の梅雨に関するものだが、関東・甲信越の梅雨明けが8月4日ごろということは、九州では7月は梅雨末期の大雨の時期である。いつも梅雨明けの頃には九州地方で大雨、の報道を耳にするが、今年の被害の凄まじさを改めて思い出して粛然とする思いである。

その後、8月に入っての梅雨明けは1998年・2003年(いずれも8月2日ごろ)、2007年の8月1日ごろと過去4回の記録となっている。今年の確定値が8月1日ごろと出れば観測史上5回目の8月梅雨明けということになるのだろう。因みに入り・明けの日付に「ごろ」とつくのは、気象庁によると「梅雨の入り明けには、平均的に5日間程度の〝移り変わり〟の期間があり、データ上の確定値は移り変わりの期間の概ね中日を示す」とあり、「移り変わりの真ん中あたり」を入り明けの日とするために、「ごろ」と付くのである。

1998年には中国・揚子江流域での大規模洪水(7~8月)・パプアニューギニアでの大津波(7月)・超大型ハリケーンで中米諸国に甚大な被害(10~11月)など、地球規模での災害が目立った。2003年の出来事では、10年ぶりの冷夏・十勝沖地震(9月)・SARSの流行(4月~)・グレゴリー・ペック/キャサリン・ヘプバーン/チャールズ・ブロンソンなど銀幕のスター各氏が死去するなど、気象関係以外でも時代の変わり目を感じさせる出来事の多い年だったようだ。2007年の気象関連事項では、能登半島地震(3月)・新潟県中越沖地震(7月)などのM6.9、M6.8の最大震度6強の地震が起こっている。

梅雨明けの遅い年に起こった出来事をこうして並べたてて、遅い梅雨明けという気象状況の変化との因果関係を云々して、因縁話をするつもりはない。観測開始の1951年と比較して世界的に気象状況が大きく変わりつつある今、遅い梅雨明けそのこと自体がその変わりつつある気象状況の一つであると思うからだ。

地球温暖化について世界中で様々な警告やキャンペーンや運動がなされている。その一つひとつを見聞きし関心を寄せることも大切だが、昔と現在の気候・気象の変化を肌で感じることは、現在自分が置かれている地球の状態を理解するために、大切なことではないだろうか。梅雨明けにしても何にしても、昔は季節の変わり目がはっきりとして緩やかだった。矛盾した言い方かもしれないが実感としてそうなのだ。日本が亜熱帯の気象に近づいているような現代は、はっきりとして緩やかに四季が移り変わる余裕も無いのではないだろうか。梅雨明けの雷を懐かしんでいるうちに、懐かしさが遠い未来への想いに重なっていった。

初稿: 2020/08/02

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