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更新日: 2021/07/28

赤塚不二夫さんのこと

赤塚不二夫さんのことの写真

長い間気にかかっていた事があったので、赤塚不二夫さんのことについて少し調べてみた。赤塚不二夫さんといえば、あの「天才バカボン」。この漫画が少年漫画週刊誌やTV化されていた頃にはもう漫画は「サザエさん」以外、卒業していた年齢だったせいもあって、実はあまり目にしたことはない。そんな私でも登場人物のことを知っているくらいだから大したものだと思う。気になっていたことというのは。

「天才バカボン」の登場人物の名前のことなのだ。これはあちこちでかなり取り沙汰されているので、もはや周知のことでもあるかとは思うが、念のため気になる名前を挙げてみると。

まずタイトルの〝バカボン〟。それからレレレのおじさん。バカボンの弟〝ハジメちゃん〟。〝タリラリラ~ン〟。最後にバカボンパパの決めセリフ〝これでいいのだ〟。

ネットなどでちょっと調べれば山のように出てくるが、これらは仏教世界と大いに関係がある。タイトルからして釈尊の尊称なのだ。「薄伽梵」と書いてバキャボンあるいはバカボン(サンスクリット語 bhagavat バガヴァットの漢音写)。聖なる者・煩悩を超えた者の意味で世尊(釈尊)のことなのである。いつも勢いよく箒を持ってお掃除しているレレレのおじさんは、

釈尊の弟子・チューラパンタカ(愚かさ故に悟りを得られないと悩んでいた弟子。釈尊から箒でひたすら毎日掃除をするように言われ、そこから悟りを得る事ができた)がモデルと思われる。ハジメちゃんは、私の大好きな元・東大名誉教授であり東西比較思想史の大家である中村元(なかむらはじめ)先生のお名前と同じ。〝タリラリラ~ン〟はチベット仏教における真言の一つである。そして〝これでいいのだ〟。

釈尊は説法を希望する人は、善人であれ悪人であれ、賢者であれ愚者であれ、富める人であれ貧しい人であれ、男であれ女であれ、これを拒む事なくその人に応じた方法で説法をしたという。そして〝これでいいのだ〟の説くところとは、この釈尊の在り方でもあり、ある意味、全ての事象をあるがままに受け入れる、という悟りの境地を示すものでもあるのだと思う。

ここまで仏教の要素が取り入れらるからには、赤塚不二夫さんはきっと何処かでインド哲学なり、仏教思想なりに親しく触れた時期があったに違いない、と思いつつ、それを確認することもしないで来たのである。そこで付け焼き刃的な調べ方ではあるが、赤塚不二夫さんの略歴を見てみることにした。すると意外にも仏教に親しんだような事実は見当たらない。しかしながら彼の略歴から一つの回答を得たように思った。

生まれてから11歳までを過ごした満洲時代。中国人の上に立ちつつも一切の差別をしない公正で清廉な父親の態度、日中戦争となり避難していた折の悲惨な思い出、引き上げ後の中学時代の周囲との関係。そして目にしてきた肉親や引揚者や兵隊たちのあまりにも多くの死。世の無常、ある種の諦観などが染み付いて行ったのであろう。結果、強者は弱者を庇い、弱者の立場を思いやる心を育てていったそのことが書く漫画に投影されていったように思う。慈悲の心とでも言えるのかもしれない。

それらの経験をとおして世の中をあるがままに、前向きに受け入れる境地になっていったのではないかと・・・。これこそが赤塚不二夫さんの人生にとって最も大きな意味を持つ価値観だったのだと思う。しかしながら起こったことにクヨクヨせず、囚われることなく、ありのままに「これでいいのだ」と思える境地に至るにはやはり至難のことではある。

ご本人は仏教との関わりについては殆ど明らかにはされていないそうである。が、私には何処かで必ず勉強されたのではなかったか、と思えてならない。もしかしたらかの漫画の聖地・「トキワ荘」で、後日には著名な漫画家となったメンバーとの会話の中で、哲学的な議論に盛り上がった時代があったのかもしれないと想像するとなんだか楽しい。

私の住んでいる東京の豊島区は、かの「トキワ荘」のあった場所である。自宅からでも自転車なら15分もかからない、椎名町(現在は〝南長崎〟と町名変更されている)に存在していた。そんなこともあって、「トキワ荘」の住人だった赤塚不二夫さんのことを思ってみた。

初稿: 2021/04/13

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