The Guitar II Takayuki Inoue
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もっと空間音楽を楽しむ波動盤CD

The Guitar II Takayuki Inoue

前作「The Guitar」の続編である波動録音盤CD「The Guitar II」。前作リリースから約1年を経て、波動音源のミックス技術も試行錯誤を続けて進化をしました。空間音楽という観念をより感じてもらえることと思います。飛び交う小鳥や清らかな沢の流れをイメージしながら、情景を目に浮かべながら音の拡がりを楽しんでください。

収録曲

  • Days of Blues,
  • 雨のアムステルダム,
  • 小鳥たち,
  • 流浪の民,
  • To Tell the Truth,
  • 子猫のポルカ,
  • I Stand Alone/一人,
  • 花・太陽・雨(別バージョン),
  • SAWA~水辺にて~,
  • Night Fall,

波動録音の日々
〜全てを任せて〜

「The Guitar」に続く〝波動版シリーズ〟2枚目のアルバムです。発売年は前作から1年たっていますが、実際には2枚分を一時期に録音していたのです。前作発表から1年の間にエンジニアの研究も進み、より深い響きと拡がりが得られるようになりました。

これらのレコーディングの間には、様々なドラマがありました。弾き語りの録音日に気持ちが乗らず、ドタキャンしてしまったこと(「しょうがねぇなぁ」)。どうしても思うような演奏が出来ずに、ブースの壁際に寝転がってしまったこと(〝♪壁際に寝返りうって〟の世界です。「傷だらけの友情」未発表)。お馴染みのソロのメロディをガラッと変えようと大胆なアレンジにしてしまったこと(「I Stand Alone」本CDに収録)。実に30テイク以上に及ぶ回数になった楽曲(「街角・パントマイマー」前作に収録)。腱鞘炎を押しての連続アルペジオを危惧していたのに反して、案外すんなりと録音できた「小鳥たち」(本CDに収録)。本来、四分の五であるリズムを四分の四でトライし、やっぱり四分の五が正解だと確信した「流浪の民」(本CD収録)。サビに裏メロを、と言われて、本人は「どうかな?」と言いながらもその日の夜に書き上げて、翌日録音。ミックスを聴いた時に感激した「青春の蹉跌」(前作に収録)。弾き語りも、ギターと歌を同時に録音しようと挑戦したものの歌の途中で泣き始め、歌いきるのに苦労した「泣きぬれて恋をして」(前作にボーナストラックとして収録)。

音楽CDとしては世界初の挑戦となり、これから3作目も、という企画は叶わないこととなりましたが、井上堯之が全てを任せた音創り、そして仕上がりに納得したシリーズとなりました。どうぞ様々なドラマを生んだ「The Guitar」と、本「The Guitar II」を併せてお聞き頂きたく思います。

一発録り
〜振り出しに戻る・・・〜

一発録り。マイクを立てて音源を録音する最も基本的な録音方法です。最新技術である〝波動録音〟は旧来の、この一発録りで行われるのです。

スタジオのブースに入っていきなり本番、という事はまずありません。キューボックスで簡単なやり取りをして、先ずは〝練習〟。1〜2回弾いているうちに井上の指も滑らかになってくる、アドリブも良い。そこで「本番行きましょう」ということになるのですが、この「本番行きましょう」はいつも少なからず井上の気持ちを緊張させるのです。

クリックが鳴り始め、ブースもコントロールルームも緊張の一瞬です。そんな時、第一音が〝プツッ〟といったりすると全員がズッコケて大笑いになりますが、それが余計な緊張を取り去り、却って良い結果になったりすることもあります。ところが・・・。

練習もまずまず、本番の滑り出しも良い。これは2〜3テイク録れるかな、と思えた瞬間、つまづきが出ます。曲を演奏するということは、最初から最後までが一連のリズムの流れ(奏者の意識の流れ、とも言える)になっています。なので一旦演奏を停止して途中から演奏を開始すると、それまでのブース内の空気感(反響)が変わってしまいます。その為、空気の振動を録音する波動録音では途中から録音を続けることが出来ません。同じ人間が演奏しても空気の振動は毎回違ったものになるのです。演奏が止まったのがたとえ最後の音であろうとも、また最初から弾き直しをしなければならないのです。

曲の中に〝鬼門〟の箇所があって、そこに来ると演奏が止まることがありました。鬼門のフレーズに来て、一同固唾をのむ思いでいると無事通過。そうすると別の箇所で止まる。また最初からやり直し。まるで上がりの手前でサイコロの目に裏切られて、振り出しに戻る双六、の状態です。弾き直しが30回近くに及んだ「街角・パントマイマー」は、今でも鮮烈な思い出になっています。

最新の技術と旧来の一発録り、ですがこれが本来の〝録音する〟ということなのかも知れない、と思っているのです。

ギターオケ
〜誕生と思い出〜

2009年以降、しばらくの間ライブではギター4本を携え、比較的新しい楽曲ばかりのレパートリーで井上自身の昔の楽曲などは演奏していませんでした。そんな時期、名古屋のライブでのことです。ファンの方々と打ち上げをしていた折に、この曲も聴きたい、あの曲もまた弾いてほしい、という声があちこちから上がりました。井上は驚くと同時に、そのことが〝そんな曲やっても仕方ない〟というそれまでの自身の考えを改めるきっかけとなりました。

その後、過去のアルバムやシングルで発表していた楽曲のうち、ソロライブ用の伴奏にアレンジ出来そうなものの選定が始まり、20数曲がピックアップされました。それから数週間を掛けて〝ソロライブでも成立するような伴奏〟を新たに書く作業を進めていったのです。

その後からは毎日2曲くらいづつの録音になります。民生機を使用した宅録です。井上は録音が終わるとその後のミックスダウンには関わらず私に任せて仕上がりを確認するだけなのですが、録音作業もミックスダウンも初めての事で戸惑う事しきりでした。ミックスダウンを確認している間中、ヘッドフォンをしたまま黙って目を閉じています。聴き終わった途端、怒りだすかニッコリ笑うか。どちらだろうと緊張の時間です。両極端のどちらになるかは聴き終わる瞬間までわかりませんでした。

それらの曲の中でどうしてもミックスが上手くいかず、「この曲はダメだよ、伴奏として成立しない」と匙を投げた楽曲があります。録音時も苦労した曲でした。何とかしたいと、2バンドしかないEQと格闘すること2時間。やっとOKが出たこの楽曲は、このアルバムに収録されている「雨のアムステルダム」でした。

本CDでは、また少し違った伴奏となっていますが、井上が古い楽曲を演奏するようになり、ひいてはこの波動版シリーズが完成したのはファンの方々のお陰だと、今でもありがたく思っているのです。