全曲ギター弾き語りのCD
全曲ギター弾き語りのアルバム。ジャケット写真は立木義浩氏。井上堯之が出演した映画「カーテンコール」挿入歌の『見上げてごらん夜の星を』『いつでも夢を』とフォーククルセイダーズのヒット曲『悲しくてやりきれない』という異色の楽曲やライブでは時折演奏する『愚か者』弾き語りバージョンも収録されている。
井上堯之といえば、エレキギター、ロック、インストゥルメンタルでのアドリブ・・・。そういった印象を持たれる方は多いと思います。このCDはジャケットからもお分かりの通り、主に活躍するのはエレキギターではなく、エレアコ〜YAMAHA AEX1500〜です。そして収録されている14曲全てがヴォーカル曲、ということもCD(アルバム)として、初めてのことでした。
そして収録曲にも新しい世界を見いだす事が出来ます。1曲目はフォーククルセダーズの大ヒット曲のカバー「悲しくてやりきれない」。フォークソングを井上がアレンジするとこうなる、というコードワークに井上らしさを感じて頂けることでしょう。また、歌謡曲である「見上げてごらん夜の星を」と「いつでも夢を」が収録されておりますが、この2曲は2004年に公開された映画「カーテンコール」(監督:佐々部清)での挿入歌です。井上にとって歌謡曲は終生、苦手なジャンルでしたが映画の中で演奏するシーンでは本当に涙を流しながらの演奏でした。井上は感情移入が上手、というより本心から、自然に配役の人物の心情になってしまえるようなところがありました。
最初にこの映画出演へのオファーがあった時、井上は〝自分には映画で演技をする力はない〟と思っていたようでした。それが佐々部監督に会った時、〝監督は自分の演技力のなさも何もかも分かった上でのオファーなのだ〟と感じたそうです。そうであるならば答えは一つしかありません。監督に全てを預ける気持ちで「よろしくお願いします」深々と頭を下げたのでした。
井上堯之のアレンジによる歌謡曲、映画をご覧になった事がない方にも、何かが心に語りかけてくるような気持ちにさせる楽曲に仕上がっていると思います。
ライブでは時折演奏しておりましたが、初のCD収録となっている楽曲がもう一つあります。「愚か者」です。オリジナルではエレキギターを使ったロック調のイントロが有名ですが、ここではアコースティック・ギター(Taylor)を弾いています。Taylorのハリのある音と緊張感のあるコードワークとストロークが、また別の新しい世界を聴かせてくれます。
その他、PYG時代の「花・太陽・雨」もTaylor とYAMAHA Pacifica でのアレンジ、Ben.E.King の名曲「Stand By Me」(Taylorで演奏)など、様々な〝新しい世界〟を聴くことが出来るCDと言えるでしょう。